漆の森に春の訪れ

冬の間深い雪に閉ざされ、入ることのできなかった漆の森にも春が訪れました。

 

雪が解けるやいなや、里山は大変な忙しさです。

種から苗木を育てている畑では、越冬のため「根切り」をして寝かせていた苗木を掘り出して植栽地に運び、畝を立ててまた種蒔きをします。

植栽地では例年よりも多く降った雪の重みで壊れた獣害対策の柵の隙間からイノシシが入り込み、土が掘り返されていました。動物達にとっても待ちに待った春です。このまま放置しておくと新芽を全部鹿に食べられてしまうので、春雨の中大急ぎで柵の修理に取り掛かります。柵を張り直し、雪で倒れた苗木を起こし、下草が生えないうちに土壌を整え。

人手は足りていませんが「縄文から続いてきたサイクルを次の世代に繋げたい」皆がそんな思いで取り組んでいます。

 

でもいつも何か違和感が。本来、山が豊かであればイノシシも鹿も食べ物に困ることなく里に下りてくることもないので柵を張る必要もないかもしれない。現代人の営みが動物の暮らす環境を脅かしているだけ、もしくは山に光を届ける手入れを放棄してしまったからでは、ということ。

人が人の都合だけで自然を拓くのではなく、そこに生きる動物や植物のことまで考えた上で人の快適さが得られたら、どんなに美しいことかと。

 

顔を覗かせたフキノトウを摘みながら、今年も変わらず恵みをもたらしてくれる漆の森に感謝しつつ、そんな調和した世界に思いを馳せます。


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